Goh Hotoda

アウトボード感覚で使える新しいタイプのクロック・ジェネレーター

“クロック・ジェネレーターに関しては、90年代終わりのAARDVARK Aard Sync IIに始まり、ここ何年かはApogee Big Benを使用していたんですが、最近は正直なところ別に要らないかなと感じていたんですよ。と言うのも、ハイクラスのAD/DAコンバーターはどれも内蔵クロックの精度が高いですからね。でもたまたまネットでBlack Lion Audio Micro Clock MkIIIのことを知り、評判が凄く良かったので、とりあえず試してみることにしたんです。

自分のスタジオで試用して思ったのは、とにかく音が変わるクロック・ジェネレーターだなということ。これはメーカーが、かなり音を作り込んで開発したクロック・ジェネレーターだなと感じました。例えば、このクロックを使うだけで中域に独特の張りが出るので、歌ものの楽曲なんかはとても華やかな感じになる。まるでEQしたかのように、ボーカルがグッと前に出てくるんです。あとはハイの分離も良くなりますね。もう外部のクロック・ジェネレーターを使うのはやめようと思っていたところだったんですが(笑)、クロック一つでここまで音が変わるのなら、楽曲に合わせて内蔵クロックと使い分けてもおもしろいなと思い、Big BenをMicro Clock MkIIIに入れ替えたというわけです。

ぼくはこのMicro Clock MkIIIは、数十万円〜100万円以上する高級なクロック・ジェネレーターとは思想やコンセプトを異にする製品なんじゃないかなと思っています。従来の高級なクロック・ジェネレーターが神棚に崇めて使うようなものだとしたら、Micro Clock MkIIIはアウトボード感覚で道具のように使えるクロック・ジェネレーターというか。そのコンセプトがとてもおもしろいなと思いますし、このクロックを使うことできっとミックスも変わってくると思います”


プロデューサー // エンジニア

1960年生まれ。東京都出身。シカゴでキャリアをスタートし、1990年マドンナの『VOGUE』のエンジニアリングを務め、今ではポピュラーとなったハウス・ミュージックの基盤を作った。その後ジャネット・ジャクソン、ホイットニー・ヒューストン、坂本龍一、宇多田ヒカルなどの一流アーティストの作品を手がけ、トータル5800万枚以上の作品を世に送り出す。2度のグラミー賞受賞作品など世界的にも高い評価を受けている。仕事を通じ10年来の付き合いのあった『REBECCA』のNOKKOと2001年に結婚。『NOKKOandGO』を結成。現在はミックスとハイレベルなマスタリングスタジオを可能とした2世代目となるstudio GO and NOKKOを所有、インターネットによるオンラインミックスサービスを行い世界中からのクライアントに貢献している。
[Goh HotodaオフィシャルWebサイト]