The Professionals Reviews

藤井麻輝

minus(-)SCHAFT/睡蓮

1990年代、SOFT BALLETのメンバーとして活躍し、活動休止後はShe-Shell/睡蓮という自身のユニットを率いて、独創的な作品を次々と発表した藤井麻輝氏。中でも睡蓮が2007年から2009年にかけて発表した一連の作品は、和のフレーバーを取り込んだ独特な音楽性と、緻密に構築されたアレンジで、“聴く耳”を持った人たちから高く評価されました。2014年にSOFT BALLET時代の盟友、森岡賢氏と新ユニットminus(-)を結成し、音楽活動を再開。並行して今井寿氏(BUCK-TICK)との伝説のユニット、SCHAFTの活動も再開するなど、非常に精力的な活動を続けています。そんな藤井氏が、新しいDAWシステムとして選んだのがPreSonus Studio 192とStudio Oneとのコンビネーション。そのレンジの広い音質と親和性の高さが評価され、minus(-)やSCHAFTなどのツアーでも採用されています。そこで、藤井氏にオーディオ・インターフェース/コンバーター遍歴とStudio 192/Studio Oneについて独占インタビュー。

Studio 192は本当にレンジが広い。この価格帯ではあり得ない音がしている

AD/DAコンバーターの重要性に気づいたのはかなり前で、ヤマハがCBX-D5というDAWの先駆け的なボックスを出したのですが、その時ですかね。僕が初めて使ったオーディオ・エディターはDigidesign Audiomediaでしたけど、あれはデジタル入出力がありませんでしたから。Audiomediaを使っていた時は、入出力の音質云々よりも“コンピューターを使ってこんなことができるのだ”という可能性の方が大きかった。実際にAD/DAコンバーターやマスター・クロックを使い始めたのは、Pro Tools IIIを手に入れてからですね。

Pro Tools III時代は、Digidesign 888 I/OのAES/EBU入力に20bit ADコンバーターのLexicon 20/20を接続して使用していましたが、あれは長く使っていましたね。ほぼローランドMKS-80専用のADコンバーターとして使っていましたけど、Lexiconのキャラクターというか、張り出しが強くて凄く良いので今でも持っています。当時のマスター・クロックはdCS。今もマスター・クロックはdCSで、使い始めてから2回アップグレードしていますけど、一番“僕っぽい”んですよね。

SOFT BALLETの後、She-Shellの時にはAmek DMSで全部AD/DAしていましたけど、2001年にGenex GXA8を手に入れてからは、今に至るまでずっと愛用しています。GXA8は、いまだにどのAD/DAコンバーターよりも好きですね。手に入れた当時はApogee AD-8000がポピュラーでしたが、GXA8の方が断然自分の好みでした。どのあたりが好みなのかと訊かれても、とにかく自分好みとしか言えないですけど、ボーカルもギターも全てGXA8を使用しています。

ライブ用のシステムとしては、長い間MackieのHDR 24/96というスタンドアローンのハードディスク・レコーダーを使用していましたが、単体で4Uありますしディスプレイなども含めるとデカいのでminus(-)のツアーで持ち運ぶ気にはなれなかったんです。制作ではApple Logic Pro 9を使用していましたから、試験的に森岡所有のRME製オーディオ・インターフェースを導入してみました。できるだけコンパクトなシステムにしたかったからなのですが、出音が自分の好みでは無く、さぁどうしようと言う状態がしばらく続いていました。

それで2016年からのSCHAFTのツアーに入る前にシステムを見直そうと思い、色々なメーカーのオーディオ・インターフェースをチェックしていた過程で、PreSonus Studio Oneに興味が出てきたんですよね。Studio Oneに関しては、周りから“音が良い”という話が以前からチラホラ聞こえていて、あんまりそういうのは信じないですけど、実際に使ってみたら本当に音が良かった(笑)。Studio Oneであれば、純正のオーディオ・インターフェースがあるので、同じメーカーで揃えられるから親和性も高いんじゃないかなと。もちろん音が嫌だったら絶対に使いませんが、試しにPreSonus Studio 192と使ってみたら凄く良い感じだったので、Studio Oneと組み合わせてライブで使用することにしました。ですから、Studio 192のきっかけはStudio Oneだったんですよね。

Studio 192の音質は、レンジが広いです。縦も、横も、奥行きも。この価格帯ではあり得ない音がしていますね。本当に上下左右奥行きが広いので、今までの感覚だと最初はパンチが無く聴こえてしまう。それくらいレンジが広い。Studio 192で再生すると、今まであまり意識していなかった帯域がグッと出ますからね。機能面に関しても、モニター・コントローラーにもなりますし、1台で凄く良く出来ているなと思いますね。これから電源やケーブルでチューニングすれば、もっと良くなるのではないかと思います。それがSCHAFTやminus(-)のライブで使用してきた現時点での結論です。

このStudio 192とStudio Oneのシステムは、どういう使い方になるかはわかりませんが、このまま制作でも使っていこうと思っています。Logic Proは、9で音が変わって、Xでもかなり音が変わってしまいましたからね。Studio Oneは、もともとSteinbergにいたエンジニアが開発したソフトウェアですし、僕のLogicも同じドイツのNotatorだったわけですから、それほど世界が違うわけではないです。Studio Oneで普通に音を取り込んで出すまでの操作は1日で覚えることができました。それで、もっと使ってみたいなと思って現在鋭意勉強中です。今年はStudio Oneでガシガシやれるといいなと。

待望のファースト・フルアルバム『O』をリリースしたminus(-)

minus(-)は、音楽活動を休業していたので単純に復帰ライブをやりたかった。でも一人じゃ嫌だなと思っていて、森岡に声をかけたわけです。だから、そもそもはライブ用のユニットです。その当時、森岡はEDMにドハマりしていて、彼がいなかったらそっちには行ってなかったですね。ただ、僕の他のプロジェクトと比べると、“隙”を多く作ってあります。それは、やり過ぎると森岡の感じがなくなってしまうと思ったので。だから“これくらいはいいかな”という部分は、あえて放置しました。

ファースト・フルアルバム『O』のコンセプトは、2枚のミニ・アルバムをコンパイルしたものに、新曲を追加して。第1期minus(-)の集大成というか。新曲は、森岡のコンピューターに残っていたデータを元に作られたと噂がある様ですが、それは誤解です(笑)。森岡が亡くなったのはマスタリングに入る1週間くらい前だったので、歌以外はほぼほぼ出来上がっていましたから。

アルバムのマスタリングは、90年代後半からティム・ヤングかイアン・クーパーにお願いしていて、minus(-)の作品も最初ティムに頼んだんですけど、スケジュールが合わなくて。そうしたらティムがMetropolis Studioのマゼン・ミュラドを紹介してくれて、お願いしてみたら凄く良かった。3人の中でマゼンだけ会ったことがないですけど、カタール出身のエンジニアで、本当に巧いですね。今、一番のお気に入りで、僕の作品は、それ以降彼にお願いしています。minus(-)の活動と並行して他のプロジェクトもできたらやりたいですね。

取材協力:モウリアートワークススタジオ
PHOTO:八島


藤井麻輝 | Maki Fujii

1965年8月17日生まれ。長野県出身。volageなどのバンドに参加後、1986年にSOFT BALLETを結成。1995年に活動終了後は、She-Shell、睡蓮といったユニットで活動しながら、様々なアーティストのプロデュース・ワークを行う。2002年のSOFT BALLET再始動に参加するが、2枚のアルバムを制作後、2003年、再び活動休止。それ以降の活動の場は、睡蓮が中心となる。2011年、音楽活動を休止するが、2014年に復帰。森岡賢とminus(-)を結成し、ミニ・アルバム『D』と『G』をリリースする。また、今井寿(BUCK-TICK)と25年ぶりにインダストリアル・ユニットであるSCHAFTを再始動させたが、2016年、ファースト・アルバム制作中に森岡が急逝。その後、2016年12月、藤井がひとりでアルバム『O』を完成させた。
[minus(-)公式サイト]

モウリアートワークススタジオ

数々のヒット曲を生み出した、レコーディングスタジオとともに、CM、音楽PV、映画、などを手がける映像編集スタジオを主軸に、おしゃれな各部屋を用意。音楽スタジオは、レコーディング以外にもMIX、試聴会に最適で、同録可能な撮影スタジオとしても利用可能です。
[モウリアートワークススタジオ公式サイト]


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