HISASHI AOCHI

HISASHI AOCHI

DJ・プロデューサー/サウンドエンジニア

Hi-X65は解像度が高いという言葉だけでは収まらない、音楽の中にある課題を正確に見つけるために設計されたモニター・ヘッドフォン

 

みなさんはじめまして。関西を拠点に活動する、DJ・プロデューサー/サウンドエンジニアのHISASHI AOCHIです。

レビュー記事は色々な視点からの意見が必要だと考えています。特にAustrian Audioの製品は今後、幅広い層への普及が期待できるメーカーなので、もし自分が他のユーザーの立場なら……。そんな視点でもレビューしましたので、ぜひたくさんの方にご覧になっていただけると幸いです。

 

試聴しながら、ミックスダウン・マスタリングで実際に判断したHi-X65


Hi-X65の試聴は、ミックスダウンやマスタリングの判断に必要な細かな違和感、音像の位置、空間系のニュアンスまでを確認するため、ゆったりと自分のペースで落ち着いて音に向き合える場所で行いました。 商業スタジオなどではなく、多くのDTMerの環境に近い防音工事など全く施していない、プライベートスタジオ兼・自室です。

実際にミキシング・マスタリングの作業を行う中で、Hi-X65の導入を決定づけた瞬間がありました。 それは、左右の音量差がわずかにあることを瞬時に判断できた時です。メーターを確認すると、たしかにLチャンネルがほんの少し飛び出している。音像が左へ寄っていたのです。その場にいたアシスタントもすぐにその異変へ気づき、修正までの時間を短縮できました。

これはすでに使用していた他社のヘッドフォンでは気が付かなかった、ごくわずかな違いでした。解像度が高いという言葉だけでは収まらない、音楽の中にある課題を正確に見つけるために設計されたモニターヘッドフォンという第一印象を感じました。

 

解像度、分離感、定位。もちろんモニターヘッドフォンを語るうえで欠かせないどれも大切な要素ですが、現場で本当に重要なのは「音の異変にすぐ気づけること」だと考えています。 Hi-X65は、その判断を迷わせません。ボーカルの息遣い、アンビエンスマイクが捉えた空間の規模、リバーブの質感や減衰まで、中域を中心とした空間情報が立体的に見えてきます。中央に音像の芯があり、そこから前後左右へ広がる奥行きをしっかりと把握できる感覚です。

印象的なのは、特定の帯域を強調して「良く聴かせる」鳴り方ではないこと。煌びやかな余韻で演出するのではなく、信号そのものを冷静に確認させてくれます。 味付けの強いヘッドフォンでは判断が怖くなる場面もありますが、Hi-X65には安心して作業を託せる質感とバランスがあります。DTM初心者の方は「音楽を気持ちよく聴かせることより、音源の中で何が起きているかを分かりやすくする道具」と捉えておくと良いでしょう。

開放型ながら低域の表現も不足を感じません。キックとベース、低域の重なりや被りを確認しやすく、ダンスミュージックの制作でも非常に有効です。 エンジニアとしてのミックスダウンやマスタリングだけでなく、楽曲制作でも使いたいと思いました。作曲時の音作りからセルフマスタリングまで、DTMでの制作環境の即戦力になるでしょう。

ダンスミュージックを作り始めた方ほど「低域が大きく鳴ること」と「低域を正確に判断できること」は別だと知っておいてほしいです。 制作に重要なのはキックやベースを派手に感じることではなく、それぞれの輪郭や重なりの質感を確認できること。Hi-X65では、その違いが捉えやすいと感じました。

 

また、音響機器としての性能だけでなく、無駄を削ぎ落としながらも業務機器然としすぎない、洗練されたデザインも魅力です。装着感も心地よく、ほどよく軽量のため、長時間の作業に向いています。 もちろん開放型なので静かな公共空間には不向きですが、制作に集中できる場所でこそ、このヘッドフォンの真価がはっきりと現れます。これから制作環境を整えていく方にとっては、最初の一本として高い基準を示してくれる存在になるでしょう。

制作を始めた頃は、自分の耳の基準そのものがまだ出来上がっていません。だからこそ、最初に使うモニターヘッドフォンがどんな情報を返してくれるかは重要です。 Hi-X65のように過度な演出をせず、変化を素直に確認できるヘッドフォンを基準にすることは、耳を育てていくという意味でもメリットがあると思います。 一方で、すでに多くのモニター・ヘッドフォンを使ってきた方にとっても、判断の速さと確かさを支える新たな戦力として、長く制作環境に残るヘッドフォンになると思います。


HISASHI AOCHI(TRONIC / SPECTRA)

HISASHI AOCHI

 

2009年よりDJ・ライブパフォーマンスを開始。Ben Klock、Alan Fitzpatrick、Truncateらの来日公演をサポートした大阪のテクノレーベル「Torque」より2014年にデビュー。2017年から4年間、京都・CLUB METRO『seQuence.』のレジデントDJを務め、幅広いダンスミュージックを独自の視点で発信した。

2020年にはHiroyuki Arakawa主宰「SPECTRA」のレーベルコンペティションでグランプリを受賞。その後、Christian Smith主宰「Tronic」の25周年を記念したDrunken Kongリミックスコンテストで300組を超えるエントリーから1位を獲得し、初の海外リリースを果たす。

DJ/プロデューサーとしての活動と並行し、コンポーザー、サウンドエンジニアとして映画・CMなどへの楽曲提供や、ダンスミュージックに関する記事の執筆・監修にも携わる。現在は合同会社エンデュランスのチーフエンジニアとして、Dolby Atmos 9.1.6対応スタジオを大阪・守口市にプロデュースしている。

公式サイト

Product Photography:Ryo Yoshimi
Artist Photography:SKINNY

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