岩井喬

岩井喬

オーディオ評論家

Austrian Audioがヘッドフォンをリリースすることを知ったとき、驚きとともに至極当然の流れであるとも感じた

 

Austrian Audioがヘッドフォンをリリースすることを知ったとき、驚きとともに至極当然の流れであるとも感じました。AKGもマイクロフォンとヘッドフォン、音を録る側と再生する側、いわば両輪を揃えたブランドであったからです。

AKGの主要な密閉型ヘッドフォンは伝統的なK271シリーズと近代的なK550シリーズの流れがありますが、Austrian Audio Hi-X50Hi-X55はこの2つのシリーズの中間を行くかのようなサウンド性を持っています。

K271シリーズは30mmドライバー、K550シリーズは50mmドライバーを積んでいますが、Hi-X50とHi-X55は44mmという特別な口径のドライバーとなっています。AKGの密閉型ヘッドフォンは低域の表現がパルシブで、量感を豊かに出すよりもアタックの質感に重きを置いています。とはいえ、ある程度キックドラムやベースのボディ感、胴鳴りの密度は出てほしいところ。Austrian AudioヘッドフォンのサウンドはこのAKGの流れを発展させた方向にありますが、より現代的な表現、音色感を獲得しているようで、純粋なモニターヘッドフォンよりは耳当たりの良さ、どのレンジでも過不足ないバランスの良さにポイントを置いて設計されているように感じます。

Hi-X55と同じドライバーユニットでもオンイヤー型のHi-X50はドライバーと耳の距離が近くなることもあり、より直接的で低域の厚みを持たせた印象を持ちました。艶感を抑えドライに対象を捉えるモニター由来の性質も嫌味がなく、エレキギターのリフやハイハットのアタックを小気味よく表現。キックドラムやベースの密度は高く、アタックもしなやかに描き出します。ボーカルの口元もフォーカス良く滑らかで、ボディ感も素直に感じられました。

一方のアラウンドイヤー型であるHi-X55は耳介周辺のスペースを広く取った快適な装着性とともに遮音性能も高く、モニタリングにも適しています。音質としては間接的な響きが若干増える傾向ですが、ボーカルのシャープな輪郭表現、ベースラインの締まりの良さ、ブライトで輝き良いシンバルの粒子の細やかさなど、Hi-X55でないと表現できない部分も多いことは確かです。いずれのモデルもインピーダンスが25Ωと、モバイル環境でも難なく駆動できる使いやすい設計となっている点もメリットといえるでしょう。

春のヘッドフォン祭

4/27(土)に「春のヘッドフォン祭 2024」が開催!

Austrian Audioプレミアム・ラインを体験可能

最新情報

MI7メルマガに登録

ザ・テイスティング

OC818とOC18のサウンドを体験