増田勇一

増田勇一

音楽評論家/ライター

Hi-Xシリーズは作り手が目指した世界により近づくことができる手段。聴き慣れている大好きなアルバムで、これまでとは違う領域にまで到達できる

 

聴く専門家によるオーディオ体験記

評論家/音楽ライターが慣れ親しみ聴き込んできた楽曲を最新のオーディオ製品で試し聴きする「聴く専門家による最新オーディオ体験記」がMUSIC LIFE CLUBで始動。初回は元『BURRN!』副編集長にして元『ミュージック・ライフ』編集長で、映画『ボヘミアン・ラプソディ』日本語字幕監修も担当された音楽評論家/ライターの増田勇一氏をゲストに、Austrian Audioのモニター・ヘッドフォンHi-Xシリーズを体験して頂きます。

試聴のためにと持参した作品は、クイーン、ガンズ・アンド・ローゼズ、エアロスミス、メタリカ、ブラー、ジョン・バティステ、ピンク・フロイド。果たしてAustrian Audio Hi-Xシリーズでロックの名盤はどの様に聴こえたのか!?

 

クイーン『ボヘミアン・ラプソディ(オリジナル・サウンドトラック)』


—— Hi-X65で「20世紀フォックス・ファンファーレ」〜「愛にすべてを」を体験

増田勇一映画『ボヘミアン・ラプソディ』日本語字幕監修も担当された増田勇一氏

「最初に選んだサンプルがたまたま分かりやすかったのかもしれませんね。“20世紀フォックス” のファンファーレは、最初のドラムに続いて入ってくるブライアン・メイの弾くギターの音だけで余計な音が少ないから、楽器の鳴り方がまったく違って聴こえる。普段のヘッドフォンで聴く時は “音が割れる寸前” くらいの大きめな音で聴いてたんですけど、出だしのドラムの音からして “楽器の音” をちゃんと聴いてる気がしました。ギターの音にしても、いかにもブライアン・メイらしい高音を引き立たせたようなあの音が、言い方は変だけど『芯があるのに柔らかい』みたいに聴こえて。全体としても普段使いのと同じ音量で聴いても割れる感じもなく、非常に心地よく聴けました」

 

「その次に入って来るのが “愛にすべてを” なんですが、冒頭のピアノだけの部分からバンドが入って、フレディ・マーキュリーの歌とそれに続くコーラスが──段々と音が増えていくのを聴いていくと、音像の強/弱のメリハリがものすごくしっかりしてるのが感じられた。あとコーラスの、普段耳が追っているメロディとは別のところに耳が向いちゃう感じがありますね。だから普段聴き逃している部分がしっかりと聴こえてきて、ちょっと驚いちゃいました」

 

—— Hi-X60で「20世紀フォックス・ファンファーレ」〜「愛にすべてを」を体験

で、[密閉型]の方にすると、余計な音を外へ逃してないからかなのか、『全部の音を聴けー!』と言われているかのような、細部までが痛いほどハッキリしている感じがしました。この2曲に関してはそんな印象。……これからよりうるさいものを聴くのが怖くなってきますね(笑)」

 

増田勇一試聴中に「あー、全然違う……」と、思わず言葉が漏れ出てしまう増田勇一氏

 

ガンズ・アンド・ローゼズ『ユーズ・ユア・イリュージョン I』[デラックス・エディション]


—— Hi-X65で「ライト・ネクスト・ドア・トゥ・ヘル」と「ノーヴェンバー・レイン」を体験

増田勇一『グレイテスト・ヒッツ』はサウンド・クオリティも格段に良くなっていると語る増田勇一氏

「1曲めの “ライト・ネクスト・ドア・トゥ・ヘル” は、まずベースから入って、ドラムが入ってきてギターがギュワ〜ンッ!と来てヴォーカルがガッと入ってきて、そこからいきなり興奮が最高潮に向かっていく感じ。Hi-X65で聴くと、それが何倍も増幅・強調されていて。普段使いのもので聴いてもその感覚はあったにもかかわらず……音の位置というか、動きというか──例えば右後ろから入ってきて反対に左前方に音が駆け抜けていくような感覚──愛機で聴いている時にはさほど感じていなかったものを、とても強く感じました。ちょっと驚かされますね、これは」

 

「“ノーヴェンバー・レイン” に関しては、最初静かにピアノとストリングスで始まって、それが長めに続いて次に歌が入ってくるんですけど。ストリングスが『旧ヴァージョンにちょっと加えてみました』という程度の聴こえ方じゃないんだよね。オーケストラが背後にいて、その手前でメンバーが演奏している、その〈人の配置〉が感じられるような。作り手の意図した音の定位がちゃんと伝わってくるというか、それがより生々しく感じられました。途中からギターが入ってくるところとかは、いきなりスラッシュの姿が目の前に現れる感じというか、目を見開いて見上げさせられるイメージ(笑)。ヴォーカルも、元のヴァージョンよりリマスター版は手前に出してきているんだけど、その意図がHi-X65では普段使いのものより、さらに明確に伝わってきました」

 

—— Hi-X60で「ライト・ネクスト・ドア・トゥ・ヘル」と「ノーヴェンバー・レイン」を体験

「こちらで同じものを聴いてみたら、Hi-X65よりも一層、全部刺激が強くなる感じがしました。小さな音まで粒だちがハッキリして、全部が刺激的になったというか。ただ、自分の好みとしては、どちらかというとHi-X65の方かな」

 

増田勇一Hi-Xシリーズの魅力を語る増田勇一氏

 

メタリカ『72シーズンズ』


—— Hi-X65で「72シーズンズ」を体験

増田勇一メタリカのアルバムの面白さのひとつに、いつもの音のようでいて、作品によっていつも音が違うという点と語る増田勇一氏

「こうしてちゃんと、しかも大きめの音でしっかり聴くと、この作品が如何に細かい部分まで考えて作り込まれているかというのがわかる気がします。この曲はイントロがやけに長いんですが、楽器が順繰りに入ってくる中、歌がない分『あ、そこにそんなフレーズが入ってましたか』みたいな発見があったりもする。そうやって細部まで考え抜かれているのがわかって、すごく立体的に聴こえてきましたね。そして、1分以上経ってようやく出てくる歌については、これもまた、ジェイムズ・ヘットフィールドが意図的に声を潰していると思われる歌唱がより生々しく聴こえて、全体としてもこれまでとは印象がまたちょっと変わりましたね」

 

—— Hi-X60で「72シーズンズ」を体験

「普段使いのヘッドフォンで聴くのと印象としては大きな違いはなかったものの、さきほどから感じていた〈刺激がよりダイレクトに伝わる〉という特性に沿って言うと、『メンバーとしては、最終的にはHi-X65での聴こえ方を目指して、Hi-X60の方で確認しながら作ったのでは』というような印象ですね。こっち(Hi-X60)で緻密に音を構築した上で、Hi-X65の方を使って『こう聴こえるように』という具合に。まあ本人たちはこれを使っていたわけではないんだけど、そういう音の作り方をしたんじゃないか、という妄想が膨らみました(笑)」

「実際、ミュージシャン自身がスタジオでどんなヘッドフォンを使ってモニターするかについても好みはあるだろうし、誰かに『こういう時にはこういうものを使うべき』とサジェスチョンされることもあるんだろうけど、[密閉型]と[開放型]、その目的や用途の違い──普段こんなこと考えたことはなかったけど、この2機種で試聴してみたら、そういう使い分けもあるのかもしれないな、と感じさせられました」

 

増田勇一企画後半ではHi-X25BTとHi-X15の体験記も紹介

 

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ブラー、ジョン・バティステ、ピンク・フロイド作品での試聴体験やHi-X25BT/Hi-X15でのレビューはMUSIC LIFE CLUBで無料ご覧頂けます。

 

 

増田勇一

増田勇一

 

ますだゆういち、東京都生まれ。1984年、シンコーミュージック発行の日本初のへヴィ・メタル専門誌『BURRN!』の創刊メンバーにして、後には副編集長も務める。1992年末には老舗音楽専門誌『MUSIC LIFE』編集部に異動、1998年春まで編集長に。以降はフリーランスの音楽ライター/評論家として、邦楽/洋楽の垣根やジャンルを問わない幅広い取材・執筆活動を現在も続けている。
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