Mix Control with Touch

PreSonusミキサーおよびオーディオI/O用コントロール・ソフトウェア

Smaart Measurement Technology™

StudioLive AIシリーズおよびStudioLive RMシリーズでは、UC Surfaceリモート・コントロール/エディター/ライブラリアン・ソフトウェアに、高い評価を得ているRational AcousticsのSmaart Measurement Technology™が搭載されています。

詳しく読む:Smaartとは?

Smaart®は単体のテクノロジーではなく、サウンドシステム分析と最適化のための音響測定ツールとテクノロジーを融合させたコレクション。ライブサウンドのエンジニアやサウンド・コントラクターであれば、Smaartの評判を耳にしたことがあるかもしれません。このフィールドで、Smaartは金字塔的な存在として高い評価を得ています。

Rational AcousticsのSmaartのフル機能バージョンは、Mac®およびWindows® を対象とするマルチチャンネル、マルチプラットフォームの先進オーディオ分析ツールで、プロのオーディオ・エンジニア向けにデザインされています。極めてパワフルで洗練されたツールです。

PreSonusはRational Acousticsと提携し、PAシステムの周波数特性を簡単に確認できるよう、SmaartのパワフルなResponse™とLocator™モジュールを効率化しました。StudioLive AIミキサー・シリーズのFat Channelに搭載されたパラメトリックEQを使用したサウンド・システムの調整に必要な情報すべてを確認できます。さらに、SmaartのSpectra’s™ RTAとSpectrographは、各出力のグラフィックEQの上に表示させることができ、ミックスを分析したり、フロア・モニターの音量をすばやく上げることができます。

フル・バージョンのSmaartに比べて非常にシンプルで操作が簡単になっているとはいえ、VSL-AIに統合されているSmaartには、世界中の音響技師やライブサウンド・エンジニアが信頼を寄せるSmaartと同じテクノロジーが使用されています。

室内音響はさまざま。臨機応変な対応が必要

ライブ会場の多くは、室内環境が音響をメインに考えたデザインになっていません。もちろん、優れた音響環境のコンサート・ホールでのショーをミックスすることもあるでしょうが、それよりも、地下にあるレンガ造りで天井の低いクラブや、古い倉庫や納屋で間に合わせることの方が多いでしょう。あるいは、条件としては最悪のスポーツ・アリーナの音響に対処しなければならない場合もあります。

一般的に、サウンド・システムのパフォーマンスに大きく影響する主な要素となるのは、会場の大きさ、構造、反響です。

システムのパフォーマンスに影響する物理的な室内特性について詳しく読む

サイズが重要

部屋の大きさは、特定の音域の聞こえに直接影響します。部屋の対角線の長さを測ることで、低域のサステイン(減衰後の保持)を推測できます。たとえば、50Hzの波の長さは約6.9メートルです。つまり、部屋の対角線の長さが13.7メートルの場合、対角線の長さが4.6メートルの部屋に比べて、低域がより効果的に再生されます。

部屋の幅と長さは特定の周波数の波形サイズに直接関連しており、元のサウンドと反響したサウンドが補強し合い始めると、定在波が生じることがあります。

たとえば、縦長で幅の狭い部屋があるとして、その端から端までが約6.9メートルだとします。50Hzの波が壁にぶつかるとき、反射波は同じ経路をたどって逆の壁にぶつかり、このサイクルが繰り返されます。このような部屋は、50Hzの聞こえがよくなります(良すぎといってもいいかもしれません)。そのため、ミックスのローエンドがヘビーになります。

表面と構成素材

家具を含む部屋の建築構造も、音響特性に大きく影響します。

普段はあまり考える機会がありませんが、低周波は、壁、天井、床さえも曲げ、動かすことができるほどパワフルです。これは 振動 と呼ばれ、エネルギーを分散させ、ローエンドの鮮明度を取り除きます。たとえば、壁や床が厚いコンクリートで覆われていて振動の少ない古い紡績工場は、壁が木やブリキの薄板でできている古い倉庫に比べて、低域のレスポンスはよりパワフルになります。

部屋が与える音波へのもうひとつの影響は、反射により生まれます。分かりやすいもので言えば、カーテンやカーペットなどの柔らかい表面は比較的高い周波を吸収し、硬い表面は高域を強調します。平行壁、変わった形状の部屋、張り出しなど、あらゆるものが室内音響に影響します。

反射は、良い効果をもたらすことも、悪い効果を生むこともあります。たとえば、合唱やピアノに対する大聖堂の反射の影響を考えてみましょう。このタイプの反響(リバーブ)は望ましいものです。しかし、すべてのリバーブが良いリバーブであるわけではありません。

反響は、「コム・フィルター効果」と呼ばれる状態を生み出すことがあります。たとえば、スピーカーが反射面(コンクリートや石こうの壁など)の近くに置かれている場合、スピーカーから発せられるダイレクトな音と壁からの反響音がリスナーの耳に到達するタイミングがずれ、リスナーには音がずれて聞こえます。これにより打ち消しと強化が生じ、どの帯域に起きるのか予想できないこともあります。

しかし、サウンド・システムへの部屋の影響を評価し、システムを最適化することで、その室内環境でのシステムの出力を向上させることができます。ご使用のシステムのサウンドをマディソン・スクエア・ガーデンやアムステルダムのコセルトヘボウのような秀逸の音響に変えてしまうというわけではありませんが、正しいツール、優れた耳、多少の経験を持ってすれば、サウンドを大きく向上させることができます。

システムの最適化と調整は、スピーカーのサウンド再現能力に対する部屋の影響を最低限に抑えるプロセスです。システムの調整とは、たとえその部屋が音楽を聴くのに最適な環境ではなくても、ミックスに対してできるだけ最適な環境を作成することです。これはいくつかの利点をもたらします。

システムの最適化と調整の利点について詳しく読む

正しい最適化と調整が行われたシステムでは、アンプが不要な周波数帯を強調することがないため、システムの効率性においてよりよい成果を提供します。ミックスがより一貫したものとなり、会場の心配をすることなく、毎回同じようにショーをミックスすることができます。

また、特定の音楽ジャンルに適切なミックスをより簡単に作成できます。たとえば、音量が大きくベースが強調されたロックと弦楽四重奏のクラシック音楽で、異なる微調整が行えます。

Smaart Measurement TechnologyとStudioLive AIミキサー・シリーズは、こういった問題の解決に役立つ重要なツールを提供します。Smaartなら、StudioLive AIミキサー・シリーズのグラフィック/パラメトリックEQを活用し、PAサウンドを向上させることができます。

問題となるフィードバック周波数を正確に検出。スピーカーを部屋に合わせて調整。VSLのSmaartを使用すれば、音響学の知識がなくても簡単にこれらを調整できます。VSL-AIに統合されたSmaartは、直感的でアクセスも容易です。経験の浅いユーザーでも基本的なシステム調整を行うことができ、また熟練のユーザーもシステムをすばやく正確に調整することができます。

ミックスのスペクトル成分をリアルタイムに表示。分かりやすい操作を実現

Universal Control-AIのグラフィック・イコライザー・タブをクリックすると、Smaart SpectraのSpectrographとリアルタイム・アナライザー・アルゴリズムが起動し、ルーティングされているスペクトル成分が特定のグラフィックEQに表示されます。

Smaart SpectraのSpectrographには、レベル、周波数、時間が対となって表示されます。周波数と時間を軸で、レベルを色で表示し、スペクトル測定結果を連続グラフ表示します。このディスプレイには5秒間にわたるスペクトル情報が表示され、Auxミックス内のフィードバックなど、ミックス内の傾向を確認することができます。

Smaart Spectrographについて詳しく読む

Smaart Spectra Spectrographは、周波数と時間を軸で、レベルを色で表示し、スペクトル測定結果を連続グラフ表示します。

スペクトル内のある周波数帯が下のスレッショルドを超えると、グラフに表示され、低レベルでは濃い青、その後レベルが高くなるにつれて緑、黄、オレンジ、赤へと変化していきます。最終的に、レベルが上のスレッショルドに達するかスレッショルドを超えると白で表示されます。

これは、フィードバック周波数などの長周期の傾向をすばやく検出したい場合に特に便利です。フィードバックは垂直線としてはっきり表示されるのですぐに判別でき、StudioLiveのグラフィックEQで調整できます。

SmaartのSpectrographはリアルタイムの周波数情報の連続した「流れ」を表示するため、フィードバックがあれば、白または赤のはっきりとした「線」としてSmaartのSpectrographのディスプレイに表示されます。最も近い周波数帯を非常に簡単に下げることができます。対応する31バンドのGEQスライダーを下げれば、あっという間にフィードバックを除去することができます。

Auxモニター・ミックスやフロア・ウェッジにも、PAメインにも使用できます。他のフィードバック抑制方法よりもずっと効果的です。

Spectra RTA(リアルタイム・アナライザー)を有効にすると、今聞いている内容が表示されます。ミックスのローエンドが強すぎるのか、ルームがブーミーなのか判断しにくい場合は、RTAを使用してミックスの問題箇所を表示させ、クリーンにすることができます。

Smaart RTAについて詳しく読む

RTAの周波数成分を分析する機能、特に、問題のある部分に的を絞るために特定の周波数帯を視覚化する機能は、数々のミックス・エンジニアにとって大きな魅力となることでしょう。聞こえている内容がそのまま視覚化されるので、調整中に正しい周波数が選択されているかどうかをすばやく確認できます。

これは、ミックスの設定時に特に便利です。RTAには履歴情報がない(イベントが生じると消去される)ため、問題が解決されたかどうかがひと目で分かります。

たとえば、気になるフロア・タムがあるとします。StudioLive AIミキサー・シリーズのSIP機能を使用してメイン・ミックス内のこのチャンネルをソロに切り替えれば、Main BusのグラフィックEQで確認できます。これで、どの帯域に調整を加える必要があるかをすばやく確認できます。StudioLive AIミキサー・シリーズでフロア・タムのチャンネルを選択し、Fat ChannelのEQカーブを調整します。フィードバックの除去にはAuxミックスのFat Channel EQのSpectrographを使用し、グラフィックEQは演奏者の目視での確認用に使用することができます。RTAが変化する様子を見ながら、耳を使ってその変更が正しいかどうかを確認できます。

便利なウィザード

StudioLive AIミキサー・シリーズでは、3種類のSmaart System Check Wizardsと、VSL-AI内蔵のピンクノイズ・ジェネレーターを使用して、会場の周波数特性をグラフィックにより簡単にチェックし、ディレイシステムのタイミングを計算・設定し、出力接続を確認できます。(アーキテクチャが異なるため、これらのウィザードはStudioLive 16.0.2ではご利用いただけませんのでご注意ください)。

StudioLive AIソフトウェア・ライブラリ・ユーザー・マニュアルでは、3種類のウィザードを使用して最適な結果を得るための詳しい手順とヒントが提供されています。

これらのツールを使用するには、StudioLiveミキサーのトークバック入力に測定マイクを接続する必要があります。

測定用マイクについて詳しく読む

測定用マイクは特別な種類のコンデンサー・マイクで、リアルタイム・アナライザーやスペクトログラフなどのオーディオ分析ツールでの使用向けに室内のサウンド特性を正確に再現するよう設計されています。

測定用マイクは全指向性のものが多く、5Hz〜30Hzのローエンドと15〜30kHzのハイエンドの間で非常にフラットなレスポンスとなります。

測定用マイクは高価ですが、Smaart System Wizardと組み合わせて使用することで優れた効果を発揮します。

Smaart Room Analysis Wizard

Smaart Room Analysis(SRA)Wizardは、周波数特性記録を取得し、StudioLive AIミキサー・シリーズのFat ChannelパラメトリックEQのVSL-AIディスプレイに結果をオーバーレイ表示する自動プロセスです。このパラメトリックEQを調整し、室内空間における不要な特異性を取り除くことができます。

Smaart Room Analysis Wizardについて詳しく読む

SRA Wizardは、ご使用のオーディオ・システムの周波数特性記録の取得を手順を追って行えるウィザードです。周波数特性記録は、システム測定の結果を周波数と振幅で表したものです。

VSL-AIでは、Rational Acousticの伝達関数を使用して計測されます。この伝達関数は、Rational Acousticが開発した一連のアルゴリズムから構成されており、測定用マイクが拾った信号をコンピューター生成によるピンク・ノイズと比較します。

SRA Wizardは、基本的な分析や、高度な分析を実行できます。

基本的な分析には、システムを1回計測するだけで十分です。分析が完了すると、ウィザードは、ユーザーがEQを操作している間、システムにピンク・ノイズを出力し続けます。こうすることで、フィルターの効果をリアルタイムで確認することができます。

高度な分析には、マイク位置を変えた3回の計測が必要となります。3回の計測の平均値をとることで、システムのより正確な周波数特性記録が生成されます。記録の生成が完了すると、それ以降、ウィザードはシステムの分析を継続しません。フィルターの効果を表示させるには、ウィザードを再実行します。

SmaartがVSL-AIに統合されているため、ソフトウェアは、ステレオリンクされた出力を認識し、それに応じて出力を扱うことができます。

Smaart Output Check Wizard

Smaart Output Check(SOC)Wizardは、StudioLive AIシリーズ・ミキサーのシステム出力が正しくルーティングされており、信号を通過させているかどうかを確認します。他のウィザードに比べるとシンプルなツールですが、たくさんの頭痛の種を解消してくれる優れものです。

Smaart Output Check Wizardについて詳しく読む

ショー開幕の5分前になって、モニターから音が出ないとドラマーが言い出したら?風邪で寝込んでしまった友達の代わりにクラブでサウンド担当を引き受けることになり、会場に着いたはいいものの、どのAuxがどのモニターに接続されているのか、どのサブがどのサイドフィルをコントロールしているのか分からない場合、いったいどうしたら?SOC Wizardは、まるで魔法のようにこういった問題を解決してくれるツールです。

SOC Wizardは、出力のルーティングとボリューム・コントロールを一時的に引き継ぎピンクノイズをパッチすることにより、どのスピーカーがどこに接続されているのかをすばやく判別し、ルーティングの問題箇所を迅速に特定することができます。上記のドラマーのケースの場合、ピンク・ノイズが聞こえているようなら、SOC Wizardを使用することで、Auxミックスの出力レベルが下げられているという単なるうっかりミスを見つけるためだけに必死になって配線を確認する必要から解放されます。

Smaart System Delay Wizard

Smaart System Delay(SSD)Wizardは、2つのフルレンジ・スピーカー・システム間の遅延時間を計測し、StudioLive AIミキサー・シリーズのサブグループ出力ディレイを使用して正しいアマウントを設定します。これにより、FOHのPAシステムで、セカンダリ(一般的にはサイドとリア)のスピーカー・システムの出力とメインのフロント・スピーカーの出力と同期させることができます。

Smaart System Delay Wizardについて詳しく読む

SSD Wizardは、メイン・スピーカー・システムに向けた測定用マイクが拾った信号を、セカンダリ・システムの信号と比較し、この2システム間の音響遅延の量を示します。その後、[Apply]をクリックすると、セカンダリ・システムに供給するStudioLiveサブグループの出力に対する内蔵出力ディレイにこの遅延の量が適用されます。セカンダリ・システムの出力は、その後フロントのシステムと同期されます。

このツールを使用する複数のセカンダリ・システムとStudioLive AIミキサー・シリーズの4つのサブグループ出力を同期させることもできます。

以上が簡単な説明ですが、これがすべてではありません。もう少し詳しく説明していきましょう。まず、そもそも何故このようなツールが必要なのでしょうか?ライブ・パフォーマンスに複数のスピーカー・セットを使用することは、サウンドのクオリティに非常に大きな違いを生みます。FOHスピーカー1セットに頼って室内全体を音で埋めるのではなく、室内のさまざまな場所にリスニング・ゾーンを作成することができるため、FOHシステムはフロントのみをカバーすればよくなります。これにより音量を下げることができ、最前列のリスナーの耳を痛めつけることがなく、スピーカーの忠実度も高くなります。しかし、単にスピーカー・セットを追加すればよい、という簡単な話ではありません。追加するスピーカーの音に遅延を加える必要があります。そうしなければ、オーディエンスには音がステージではなく壁から発せられたように聞こえます。

それだけではありません。電気は音よりも伝達が早いので、会場の前の方にいるオーディエンスの耳には、ステージから届く音より前に、一番近くにあるスピーカーからの音が聞こえてしまいます。音の立ち上がりや明瞭さがぼやけてしまい、不快なフェージング効果を生み出します。これを補うために、追加のスピーカー・セットに送られる信号に遅延を加えることが必要となるのです。

実際には、気温0°Cの海抜ゼロ地点で、音は秒速344.4メートル(湿度0%の場合)で伝達します。つまり音は、1ミリ秒の間に0.27メートル進むということになります。ただし、音の速度は気温や湿度によって変化します。

それでは、たとえば8月のルイジアナ州バトンルージュでの野外ライブ用にセットアップするとして、気温と湿度が通常よりも高い場合はどうしたらよいでしょうか。音波への気圧の影響を計算できる数学の達人でないかぎり、計算は多少ずれてしまうことでしょう。

SSD Wizardは、2つのフルレンジ・スピーカー・システム間の遅延時間を計測し、正しい遅延時間を設定する、自動化されたプロセスです。このウィザードの目的は、1つまたは複数のサブグループから供給されているセカンダリ・システムの遅延時間を設定することです。計算機も、計算尺も、指算も必要ありません!