Softube x Abbey Road Studios


アビー・ロード・スタジオは、世界で最も有名なレコーディング・スタジオであり、イギリス音楽の象徴でもあります。このスタジオでは、無数に渡る画期的なレコーディングと先駆的なレコーディング技術が行われてきました。1931年11月に開設されたアビー・ロード・スタジオは、世界最古のレコーディング・スタジオです。

今や伝説となったこのスタジオでは、その80年にわたる歴史の中で、ビートルズ、ピンク・フロイド、ホリーズ、ケイト・ブッシュ、U2、オアシス、エルボー、フローレンス・アンド・ザ・マシーン、レディ・ガガ、アデルなど、世界各国の有名アーティストのレコーディングが行われてきました。また、1980年代より映画音楽の世界有数のロケーションのひとつとしても存在しており、『レイダース/失われたアーク 《聖櫃》』、『スター・ウォーズ』シリーズ、『ブレイブハート』、『ロード・オブ・ザ・リング』三部作などの映画音楽がこのスタジオでレコーディングされました。他にも、『シュレック』、『英国王のスピーチ』、『ハリー・ポッター』シリーズ、『007 スカイフォール』、『ホビット』三部作などの大型タイトルもここでレコーディングされています。Softubeでは、Abbey Road Studiosとパートナーシップを築いてきており、RS127 Rack、RS127 Box、RS135のパッシブ回路をコンポーネントごとに忠実にモデリングしたAbbey Road Studios Brilliance Packをリリースしています。

 

〜 ピーター・コビンによる序文 〜

1960年代、アビー・ロード・スタジオ内には数々の小さなボックスが散らばっており、これらは「Brilliance」または「Presence」ボックスとして知られていました。この時代、特にポピュラー音楽では、エンジニアたちは録音物にプレゼンスを加える方法を探し求めていたのです。先ずはBrillianceボックスについてお話ししましょう。これらのシンプルなパッシブ・イコライザーは、ラックマウントしてスタジオのコントロール・ルームのパッチベイに立ち上げられていた、灰色のRS127 Rackのポータブル・バージョンです。RS127は、そもそもアビー・ロード・スタジオのレコーディング・エンジニア達が当時のEMI REDDミキシング・コンソールでは見つからなかった新たな周波数を得るために設計されました。

Lester Smithはアビー・ロード・スタジオのテクニカル・エンジニアですが、私たちのビンテージ機器とマイクのコレクションの管理人でもあります。近年、ビートルズやジョン・レノン関連のさまざまなミックス・プロジェクトの際に、これらの小さなボックスを私に見せてくれました。私のアシスタントは、1960年代のさまざまなセットアップ・シートで、当時広く使われていたEQに「RS127」と表記されていることに気づきました。このイコライザーはEMIがレコーディング部門のために社内で開発した127番目のアイテムだったわけです。1960年代は私たちの歴史において冒険に満ちた時代でした。ルール・ブックは無視され、エンジニアたちによる数多くの実験によって、かつて聴いたことのないサウンドを作り出すための方法と手段の構築が進められていきました。

 

灰色と緑色のRS127には同じ回路とコントロールが備わっています。灰色の方にはクロム製のラック・ハンドルが付いており、コントロール・ルームのパッチベイに接続しやすいように作られています。通常は各部屋に2台ずつ置いてありましたが、その需要の高さから、しばしば追加のEQが必要となり、緑色に塗装され独立型のボックスが開発されました。持ち運びができるので、スタジオ以外にもマスタリング・ルーム、トランスファー・ルーム、ポストプロダクション・ルームでも使われました。幸運な偶然により、緑色と灰色のユニットを比較したとき、一方をEMIのコンソールに接続されたトランスフォーマーを経由した場合に劇的な違いが見られました。このトランスフォーマー「エフェクト」によってEQカーブが過剰なまでに強調されたのです。私が目にしてきた昔のセットアップでは、エンジニアたちは2つのRS127を直列に接続して強烈なEQ処理を施していました。ぜひともこれらのEQをギターやキーボード、ボーカルに使ってみてください。+/-10 dBでは物足りないという方は、当時のエンジニア達にならって2機使いましょう!

 

RS127は主にREDDの5 kHz EQコンソールを補強するために設計され、非常に重宝されました。とは言え、依然として5 kHz〜10 kHzの範囲の周波数をブーストする必要もありました。EMIの8 kHzブースト・ボックスは広く使われていましたが、このボックスについての情報は僅かでした。今回のプラグイン化プロジェクトで、Lesterが「8 kHz」と表記されたラベル(偶然にも「ダイモ・テープ」の試作品で作られていました)をはがして裏を見てみると、このボックスが元はRS135であったことがわかりました。私たちの調査員が明らかにしたところによると、このボックスは16.4 kHzをブーストするために設計されたものの、当時の変更によって周波数を半分に抑えたため、エンジニアたちは8 kHzの信号をブーストできるようになったということです。

このようなわけで、SoftubeのAbbey Road Studios Brilliance Packには、1960年代の精神に基づき灰色のラック・バージョン、トランスフォーマー・エフェクト付きの緑色の独立型ユニット、そしてRS135を加えることを決めました。これによって、'60年代にアビー・ロード・スタジオで大活躍したプレゼンスEQがすべて揃います。

 

ピーター・コビン
アビー・ロード・スタジオ、エンジニアリング・ディレクター

 

ABBEY ROAD STUDIOSが自らのブランドで発売したプラグイン第一弾の開発をしたのがSOFTUBE。現在 は、他社からREDDやEMI TGなど数多くのプラグインを出していますが、本Brilliance PackはSOFTUBEのみからの発売になっています。Brilliance Packは1960年代に使われていたEMI ReddコンソールのEQを補強するために製作された、外付けパッシブEQのモデリング・プラグインで、部屋備え付けの灰色のRS127 Rack、可搬用にトランスを追加した緑色のRS127 Box、8kHz専用のRS135という3機種の構成です。RS127は2.7kHz、3.5kHz、10kHzの切り替えで、ゲインは2dBステップの±10dB。RS135は8kHz固定でゲインも2dBステップの0〜+10dBブースト方向のみ。周波数帯域は限られていますが、秀逸な周波数選びで実に音楽的なポイントになっています。 [レビュー記事の続きを読む]

森元浩二.(レコーディング・エンジニア)

 

アビー・ロード・スタジオおよびRSおよびそのロゴは、EMI (IP) Limitedの商標です。Abbey Road Studiosについて詳しくは、www.abbeyroad.comをご覧ください。

  • <Abbey Road Studios Brilliance Pack>
    アビー・ロード・スタジオの門外不出の品をパッシブ回路をコンポーネントごとに忠実にモデリングしています。

    25,270円